円山の備忘録の色合いが濃いのですが、ヘッドマッサージ業界に関わるセラピストのみなさま、ヘッドマッサージマニアのみなさまのためにも、もしかしたらお役に立つことがあるかもしれない、ヘッド本をリストアップしてみました。古今東西のヘッド本を温かい気持ちで、円山目線で解説しております。出版年が古いものからご紹介いたします。これからも、少しずつ更新して参ります。
愛すべきヘッドマッサージについて、語られた書物たち。
(1)インドでは古典医書に記載されるほどに、伝統的にヘッドマッサージが行われてきた。
(2)1980年代前半:ナレンドラ・メータ氏がインディアンヘッドマッサージ(チャンピサージ)を体系化し、本部ロンドンから欧米を中心に各国に伝播される。
(3)1990年代後半~2000年代前半:海外でヘッドマッサージが流布され書籍化が相次ぎ、日本国内でも名著の訳本が出回る。欧米では、オフィス・病院内での出張ヘッドマッサージが人気を博すようになる。
(4)2000年代前半:日本国内でヘッドスパ・ヘッドマッサージ専門サロンがオープンし始める。
(5)2010年代前半:日本国内でヘッドマッサージがブームとなり、国内書籍出版ラッシュとなる。
◆インド医学概論―チャラカ・サンヒター (科学の名著) 1988/2/10 矢野 道雄 朝日出版社
インドの古典医学書『チャラカ・サンヒター』第1巻「スートラスターナ」全30章の翻訳・解説本です。絶版ですが、東京都立中央図書館で閲覧できました。頭部についての記載は116-119頁第十七章 「頭部の病気は何種類あるか」で始まります。ホントは全部引用したいくらい面白いです(笑)頭痛を引き起こす要因が多岐にわたって書かれているのですが、「号泣すること」も頭痛の原因だし、「涙を無理に抑えること」も頭痛の原因の一つととらえています。「雨雲が接近してくること」という記載も!
◆アーユルヴェーダマッサージ 1998/8/31 ハリシュ・ジョハリ (著), Harish Johari (原著), 東原 佑輔
アーユルヴェーダマッサージ全般の解説。そのうち122-136頁に頭・首・耳・顔へのマッサージ方法が記載されています。写真はなく、ちょっとリアルなモノクロの絵で解説されています。「(前略)適切に行われれば、頭のマッサージは実質的に、全身のマッサージと同じ効果があります。頭は神経系の中心であるために、頭のマッサージは神経系全体を静めます。」として頭のマッサージ効果が列挙され「これらの理由から、頭のマッサージは毎日の日課に含まれるべきです」との解説があります。
・脳に対する新鮮な酸素や糖の供給を増加させます
・神経系をリラックスさせ、精神的な緊張やストレスによって生じた疲労を取り除きます
・活力を与える生気である
・脳脊髄液の循環を改善します
・脳細胞の発達に必要な成長ホルモンと酵素の分泌を高めます
・脳内のプラーナエネルギーを高めます
・乾燥を緩和します
・抜け毛、○○○、そして白髪を遅らせます
そうして頭部の反射区を勉強する者にとっては「139頁【病気の症状と頭との関係】図」が秀逸!!ハリシュ・ジョハリ氏の理念が受け継いだ子弟の方々がその功績を遺すべく美しいサイトを起ち上げられていますが、そのサイト上で「139頁【病気の症状と頭との関係】図」を公開してくださっています。良い情報をオープンにしていきたいという理念が謳われていますが、その姿勢が素晴らしい。ブラボー♪
【病気の症状と頭との関係】頭部の反射区図解
http://www.sanatansociety.org/ayurvedic_massage/ayurvedic_massage_therapy.htm#.Vjq5obfhDIU
「本図は身体の部位や病気の症状と頭の部位が関係していることを表しています。頭の一定部位の持続した痛みは、その部分とつながっている身体部位に病気があることを示しています。マッサージの施術者はこの図式を参考にして、クライアントの反射痛が示す身体部位に関連した専門医に紹介すべきです。」とのことですが、当店ではあくまでもリラクセーションの一環として施術させていただいております。
訳してみましょうか・・・
A この部位の痛みは歯茎や菌の感染と緊張を示しています。
B 眼球の痛みは酸味の過剰を示しています。
C 眼窩の痛みは胃炎を示しています。
D この部位の痛みは胃の炎症を示しています。
E この部位の痛みは胃潰瘍を示しています
F この部位の痛みは腸の病気を示しています
G この部位の痛みは卵管の病気を示しています
H この部位の痛みは腎臓病を示しています
I この部位の痛みは泌尿器管の病気を示しています
J この部位の痛みは神経痛を示しています
K この部位の痛みは白内障を示しています
L この部位の痛みは脳と脊髄神経の病気を示しています
ふむふむ。面白いですね~。
アーユルヴェーダでは、足裏のリフレクソロジー(反射区)的に、頭部にも同様のものをとらえていると言えそうですね。
先ほどから頻出のナレンドラ・メータ氏。伝統的なインドにおけるヘッドマッサージを「インド式ヘッドマッサージ」をチャンピサージとして体系化させ、単なる頭部マッサージに終わらせず、メンタリティーにも影響を与えるものであることを具象化させこの世に生み出した方です。この本では手技は座位のみの紹介です。原点にして世界標準のヘッドマッサージ、伝統と科学の融合チャンピサージは世界各国で広まっています。国内で統括するL.C.I.C.IJAPANでは一般社団法人国際ホリスティック・ヘッドケア協会が各方面からの要請を受け起ち上げられ、豊富なエビデンスと統合医療第一人者上馬塲先生のご指導のもとに、国立大学、病院など医療関係者からも信頼を寄せられて講演講座を多数実施しています。
インド式ヘッドマッサージに、視覚化、瞑想などを組み合わせ、より深いリラクセーションを提案されています。五感を研ぎ澄ませるイメージワークに違和感のないセラピストさんにはおススメ。注目すべき最大の特徴は、座位のほかに、仰臥位(ベッドでの施術)が組み込まれているのこと。基本テクニックも、円をえがくようにもむ、おす、ころがす、指の関節でもむ、ひっぱる、こねるようにもむ、かく、さすり上げる、指先でたたく、手刀でたたく、頭皮をつまむ、など一つ一つ丁寧な写真付き解説があります。施術者は抑えておきたい1冊。
メータ氏がインド式ヘッドマッサージの世界的第一人者であることを紹介した上で、ヘッドマッサージの歴史・欧米での広がり、身体のしくみ、メンタル、キャリアオイル、エッセンシャルオイル、相手への手技、セルフケア全般、ヘッドマッサージセラピストとしての自立まで書かれています。表紙も美しいですが、どのモデルさんも魅力的で、眺めているだけでも、幸せな気持ちになれます。具体的なツボ・マルマ・経絡の名称は出てきませんので、このほかに、国内で出版されているヘッドマッサージ本を組み合わせることでかなりの部分を補完できると思います。手技は座位のみです。
経絡、気の流れなど東洋医学のテクニックをふんだんに用いたところが、これまでの訳本にはなかったタイプの本。手技は座位+仰臥位。イメージをたくさん用いたヘッドマッサージ腰掛式のマッサージ台を用いた施術も掲載されています。ヘッドラッピングなど、ユニークな手技も掲載されています。お顔の反射区マッサージにも比重が置かれています。マニアな知識も入れたいセラピストさんにはおススメ。
◆インディアンヘッドマッサージ―インド伝統医学が教える手技療法 2004/11水木 みち (著)
補完療法を早くから提唱されてきた川島朗先生(東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックを開設、現・東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授)が4-5頁で序文を飾っています。ヘッドマッサージの良さを簡潔にまとめてくださっている点がいいなぁと思います。
「(前略)インディアンヘッドマッサージもこのボディーワークに属するものであるが、
その原理はアーユルヴェーダに基づくものである。オイルマッサージによる老廃物の排泄、免疫力の強化、環境に対する適応力の向上が得られるのみならず、頭部へのマッサージにより、身体、神経系全体が沈静および強化される。自我の座があるとされている頭頂部分をソフトに刺激し、精神的緊張をも緩和するのである。ストレスは、頭皮に緊張を与え、それは頭頚部のみならず全身の筋肉を緊張させる。筋肉の緊張は循環系、内分泌系の不調をきたし、全身に悪影響を及ぼす。さらに肉体の不調は精神をも傷害するという悪循環が形成されてしまうのである。インディアンヘッドマッサージは、この悪循環を断ち切るばかりか、
肉体的・精神的緊張を解きほぐし、ひいてはプラーナ(生命力)を高める。ボディーワークの真髄ともいえよう。」手技は座位のみの解説。また手技について、インド人の方が「ファンタスティック!」と施術感想を書いていらっしゃるのが、ホント素敵だなぁと思いました。
◆アジアの伝統美容療法 2010/5/14 西田 若葉 (著)
癒しのルーツをしっかり解説。結構マニアックな内容かもしれませんが、美容、セラピーを生業とする方には、隠れた名著だと円山は思います。日本、世界の政治的・歴史背景を的確にとらえ、医療・美容の歴史を紐解いてくれます。アーユルヴェーダにおける主要療法が写真図解入りでシンプルにリストアップされています。
◆DVDつき 山本幸恵 脳疲労ヘッドセラピー―深頭筋マッサージで心とお顔のリフトアップ! 2012/11/16 山本 幸恵 (著)
なんといってもDVDつき。映像で手技を確認しながら行えるということが、セルフケアには必須条件ではないかと思います。DVDを拝見しているとセラピーだけれども、ややしっかり目のマッサージの印象があります。ヘッドマッサージに脳疲労という概念が組み込まれ、ストレスケアと美容面の両方から、ヘッドマッサージの重要性をうたわれています。
◆頭から体を癒す 2013/2/20森田真理 (著), Lotus8 (編集), 冨重敬子 (イラスト), 中島聡美 (写真)
いわゆる「ジャケ買い」してしまった本。表紙、裏表紙に反射区がかわいらしく図解されていて、これ買いでしょう、と思わずセラピスト魂にも訴えかけるデザイン。この反射区図、先にご紹介したハリシュ・ジョハリの図とも関連ありそうですね。比較してみると面白いですよ♪手技はセルフケアのみ。頭だけではなく、お顔のお疲れにも比重が置かれています。鍼灸の先生のご著書だけあってツボの説明が大変わかりやすい。もし自分がヘッドにかかわる仕事をしていなくて、一女性として一冊だけ購入するなら、これかも。
◆あらゆるストレスを解消するインド式セラピー チャンピサージ入門 2013/2/20宮崎 陽子 (著)
世界的ヘッドマッサージ第一人者、ナレンドラ メータ氏の愛弟子、宮崎陽子氏。
L.C.I.C.I JAPAN(国際インディアンヘッドマッサージ日本支部)代表。一般社団法人国際ホリスティック・ヘッドケア協会代表。社団理事は統合医療第一人者、上馬塲 和夫医師(帝京平成大学ヒューマンケア学部教授)。
日本で一番古いヘッドマッサージの協会として、メータ氏の教えを日本でも広め続け活動をされている宮崎さん。恩師メータ氏へ捧げたのだろうなと感じられる愛ある1冊。インド式ヘッドマッサージ(チャンピサージ)の効用を大学との共同研究を進めるなど、エビデンスの確立にも努め、歴史・信憑性・安全性、どの点からもおススメできる内容。20頁には京都府立医科大学との共同研究で「なぜチャンピサージ」がいいの?として、副交感神経が優位になるストレス値の変化が紹介されています。セルフケアのほか、ペアで行う施術も解説。ウォーミングアップから、一連の流れを図解し、個別症状別アプローチが記載されている。アロマを組み合わせたコラムもわかりやすい。本書籍では、座位のみの技術紹介。